暗闇というカメラにとっての難敵
天体は(理想論を言えば)真っ暗闇の中で撮影するものです。
そんな状況でカメラを回してもほとんど何も写りません(肉眼は意外と見える)。
星空自体も暗いので長時間露光で炙り出していくのが常套手段となっています。
最も近年は高感度化、レンズの大口径化が進み状況は良くなっていますが
そのような機材はかなり高価であることが多く、それでようやく写る程度です。
いずれにせよカメラにとって暗闇は「難敵」と言っても良いと個人的には思っています。
ナイトビジョンカメラ DUOVOX Mate Pro V2
そんな暗闇に挑むために用意されたのがナイトビジョンカメラとなります。
今回はDUOVOX Mate Pro V2という製品をご用意いただきました。
どんな製品か、また基本スペックについてはココ(BUBBMUSH)でご確認ください。
クラウドファンディングサイトで先行販売されており少しお得に購入できるようです。
ここではカメラの実態や実写性能について紹介させていただきます。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/DUOBOX-1024x683.jpg)
DUOVOX Mate Pro V2 の外観
まずは外観を見ていきましょう。基本的にはコンデジのような出立です。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/camera-1024x682.jpg)
まさに手のひらサイズです。重さも見た目通りで感覚的にはまさにコンデジです。
ちなみにレンズの横についている黒い丸は赤外線ライトになっています。
中心波長は850nmとなっています。その効果については後にお見せしましょう。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/duobottum-1024x683.jpg)
ボタン類はカメラ上面に集約されていて電源、シャッター、方向キーとシンプル。
本当にボタン類はこれしかないので操作できるか心配になるかもしれません。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/duomonitor-1024x682.jpg)
しかし液晶モニターがタッチ操作に対応しているので直感的に扱うことが可能です。
実際に使ってみると電源、シャッター以外はほぼタッチ操作で賄うことができました。
ちなみにバッテリーは内蔵されており取り外しは不可能となっているようです。
流星の動画観測に使えそうー星空実写テストの結果からー
さっそくカメラを星空に向けてみました。まずはカラーモードでの撮影です。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/SeiyaColor-1024x683.jpg)
既に夜明け前には南中付近にやってきたアンタレス付近を撮ってみました。
(右上には日付が示されていますが正確には合わされていないので意味は無いです^^;)
これは動画からの切り出しですがおおよそ6等星まで写っていることがわかります。
これは肉眼で見える星はほぼ写るということになります(肉眼って結構感度高いのよ)。
さらにモノクロモードも試してみるとより限界等級が深くなり約7等星まで写りました。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/duomono-1024x683.jpg)
一方でちょっとした注意点もありまして星のサイズが少し大きくなります。
これはおそらくですがモノクロでは赤外線も透過させていることが原因だと思います。
その分感度は上がりますが星の収束度は少し悪くなってしまうようです。
この辺りは赤外カットフィルター除去改造したカメラと似ているような感じがします。
いずれにせよ動画でここまで写れば流星の動画観測でかなり使えるという印象ですね。
流星観測でよく使われるCCDカメラよりも限界等級は深くなるという印象があります
(流石にイメージ・インテンシファイアを使ったシステムには及ばないですが)。
なお静止画モードもありますが後述の理由で限界等級はあまり伸びませんでした。
赤外線ライトの効果ー暗闇を照らす850nmの「光」ー
そしてこのカメラには赤外線ライトという非常に強力な機能が備えられています。
天体写真を撮影する現場は基本的に真っ暗で何も写りません。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/duodark-1024x683.jpg)
そこを赤外線ライトで照らしてみると…
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/duolight-1024x683.jpg)
なんと機材が浮かび上がってきました!当然ホワイトバランスは赤寄りになりますが。
従いまして基本的にこのライトはモノクロモードの補助装置として使うようです。
また真っ暗にした部屋の中で赤外線ライトを照射し改造α7で撮影もしてみました。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/03/infrared-1024x682.jpg)
予想通り、真っ赤に照らされた物体が浮かび上がってきました。
少しピンボケになってしまうのはやはり可視光と赤外でのピントの違いのためです。
ともかく赤外線ライトは暗闇を照らすために非常に効果的であることがわかりました。
見た目には暗い赤色なので目も刺激せず、天体観望中にもほとんど邪魔になりません。
ただし撮影の場合は赤外が漏れ込んで写りますので露光中にはライトを落としましょう。
星空撮影にあたってはいくつか注意点も…
ということでDUOVOX Mate Pro V2は星空やその現場の撮影に非常に有効でした。
一方で星空撮影にあたって幾つかの注意点もありますのでご購入の際は要検討です。
まずこれが一番の欠点になるのですが基本的に「マニュアル」が無いことです。
つまり撮影の設定はカメラがオートで行うため、固定したまま撮影ができません
(唯一ピント調整のみはマニュアルで行うことができる、というかAF無いです)。
加えて写真モードで長時間露光もないため露光により炙り出すことも不可能です。
一応RAWモードがありますので調整はできますが写りとしては動画と同程度となります。
また換算焦点距離は約100mmとなっていてかなり望遠寄りという印象になります。
これは長所にも短所にもなりますが、例えばコリメート撮影には少し長すぎます。
さらに手ぶれ補正機構は全くないので必ず三脚固定で撮影しなくてはなりません。
夜のお供にDUOVOX Mate Pro V2
いかがでしたでしょうか。確かに明確な欠点がない訳ではありません。
しかしながら動画モードでこれだけの星が写るというのは非常に可能性広がります。
流星の動画観測や上手く組めばコリメートによる電子観望にも使えるかもしれません。
また赤外線ライトも強力なサポート機能となっており暗闇を照らすことが可能です。
しかも目をほとんど刺激しないので天体観望中に積極的に使うこともできそうです。
このカメラが現時点では税込5万円以下で購入可能となっております(期間中のみ)。
使い方次第で強力な武器になることは間違い無いので必要な方はお早めにどうぞ。
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