今、数年ぶりに明るい(5等級台)彗星が見えています。
C/2022 E3(ZTF) と呼ばれるこの彗星、いよいよ撮りどきがやってきました。
そこで改めて彗星独特の撮影方法(追尾方法)などについてここでまとめておきます。
ZTF彗星とは?
この彗星は2022年、ツビッキー掃天観測所にて光度17.7等級で発見されました。
余談ですが近年はこのような大規模観測で新天体が発見されることが増えました。
その結果、個人の名前がつく機会が激減しておりちょっとした寂しさも覚えます。
(なおツビッキーは有名な天文学者で、その名前を冠した望遠鏡です)
その後軌道要素が決定され、軌道周期が約5万年ということがわかりました。
つまり、今回約5万年ぶりに地球へ接近するということになります。
また地球へ0.29天文単位まで近づくため、非常に明るく見えることが期待されます。
今のところ約5等級まで明るくなると予想されており、順調に明るさを増しています。
見える場所、時間、オススメの日
それでは実際にこの彗星を見る・撮るにはどうすればいいかについてです。
次の星図はステラリウムにて星空をシミュレートしたものになります。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/01/POSITION-1024x640.png)
最も明るくなると期待されている2月1日に北極星の近くに見えるはずです。
また北の空にありますからしばらくは「周極星」として見えるため長時間撮影できます。
ただし月が上弦のため日を追うごとにどんどんその影響が大きくなっていきます。
従って撮影好機は1月後半から2月初めの数日間、ということになるでしょう。
彗星の撮り方
彗星の撮り方は少し独特です。それは恒星と違い大きく「動く」からです。
最も単純にはノイズの少ないカメラと明るいレンズを使えば三脚固定でも撮影可能。
具体的には 露出20秒 ISO1600 F2 程度でも周りの星と明らかに違う写りをします。
もう少ししっかりと尾まで表現したいならやはり赤道儀が必要となってきます。
ただしメトカーフ法が使えることが望ましく、例えばスターブックTENは対応します。
メトカーフ法に対応していない場合は?
しかし一般的な赤道儀はメトカーフ法に対応していないものがほとんどです。
そのため昔は彗星を追尾する時、専用の追尾装置を赤道儀の上に載せていました。
しかし技術の進歩により今はオートガイドに対応していればほぼ同等の追尾ができます。
大抵はST-4互換のポートがあればオートガイダーを接続可能です。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/01/DSC01818-1024x681.jpg)
そしてオートガイダーの画面にてガイド星を彗星にしてしまえば良いのです。
ZTF彗星は5等級と比較的明るくなるため、たいていのガイドカメラにも写るはずです。
うまくガイドできれば恒星は流れ、彗星を追尾しながら撮影を進めることができます。
なお撮影設定は星雲星団の撮影と同じで 露出300秒 F4 ISO1600 を目安にしています。
メトカーフコンポジット法
「そもそも私の赤道儀はオートガイダーすら対応していないんですが… 」
大丈夫です。諦める必要は全くありません。画像処理で対応することも可能です。
なおこの方法は固定撮影時に画質を高めることにも応用することができます。
まず、撮影時ですが露出時間を切り詰め30-60秒程度にしておきましょう。
あまり露出をかけると彗星が流れていきますので思い切って短縮しましょう。
ただし全体的にかなりアンダーになりますのでその分は感度やF値でカバーします。
そして画像処理ソフトで「メトカーフコンポジット」を行います。
この方法については後日また詳しく紹介する予定です(まだデータ不充分…)。
ともかく彗星が動かないうちに短時間露光で勝負!という方針でデータを取りましょう。
実際に撮ってみた
ということで実際に私もZTF彗星の撮影に行ってきました。次の写真をご覧ください。
![](http://astroenif.com/wp-content/uploads/2023/01/DSC5532down-1024x683.jpg)
・Skywatcher Quattro 150P (X0.86コマコレクター使用)
・Nikon D810A (60sec, ISO3200)
・VIXEN GPD2 赤道儀 (恒星時追尾モード、オートガイダー不使用)
拙作、というかテストショットでしかないのですが一応イオンテイルまで写りました。
たった一枚なのは天候が悪化して雲が沸いたためで、なかなか快晴の晩に恵まれません。
それどころか大寒波が日本列島を襲い、せっかくの彗星がなかなか撮れない状況です。
なんとか落ち着いて一晩だけでも良いので、しっかり撮れることを願うばかりです。
コメント
YouTubeときどき拝見してます:-)
オートガイドで彗星核の追尾を今回のZTF彗星で初めて挑戦したのですが, 5cmガイドスコープでカメラはASI120MMminiでやってみて, ボーッとした星像だとガイドの安定がいまいちなので諦めました. それにガイドスコープの狭い視野に彗星を導入するのは容易じゃないかも. (普通はたまたま写ってる星でガイドすればいいですが) そういうことで, オートガイドでも恒星追尾で1分くらいの短時間露出を多数撮って, スタックで彗星核基準でするのがやりやすいかもです. それにしてもZTFのように地球に近づくと動きが速いですね〜
Youtubeもご覧いただきましてありがとうございます。こちらも彗星ガイドやろうとしたのですが、SS-oneオートガイダーProとスマホの接続が安定せず、そもそも彗星が選択できない状態でした。彗星ガイドはオフアキにした上で専用にパラメータ調整しないと難しいかもしれませんね(思い切りコントラストつけて核だけ写るようにするとか)。あと短時間露光の方が後で合成の自由度が上がるという点でもメリットがあります。