NikonがREDを買収していずれ登場するであろうと言われていた、シネマカメラ。この度レビューさせていただく機会をいただきました。結果、本来の用途とはかけ離れているかもしれませんが、非常にノイズが少なく天体写真向きの一台という事がわかりました!
Nikon ZR 貸し出しいただきました
NikonがREDを買収したというニュースが流れたのは昨年だったか一昨年だったか・・
いずれにせよ当時、大きな話題になった事は自分の記憶には新しいです。
そしていずれその影響で、Nikonの民生用シネマカメラも登場すると言われていたのですが
Nikon ZR が登場しました!
もちろん「Z CINEMA」と銘打っているように、本来は動画撮影用の一台となります。
しかし!写真モードの時に「StarScape Photo」というモードも新たに実装されたのです!
コレは天体写真にも使える一台なのでは?という事でちょっとした期待がありました。
そこでタイトなスケジュールの中、ZRを貸し出しいただき、実機を触ることができました。
せっかくですから、その時に色々実験した結果を、ここでご覧いただきましょう!
実戦テスト!Starscapeモードがすごく便利!
まずは機能面についてです。上に紹介した通り、M Starモードというものがあります。

実はコレが便利なんです。まずこのモードにするとスターライトビューがオンになります。
他のカメラでもこの機能はありますが、設定し普段の撮影では切っておく必要があります。
(そうしないとEVFのレベルが勝手に調整され、露出が合ってない写真が量産される・・)
また露出設定も900秒が使用可能になるため、レリーズ忘れた時にすごく助かります。
さらに液晶モニターが従来のモデルよりも大きいため、ピント調整が非常に楽でした。
とにかく機能面でも星空向きのものが多く、非常に便利に使えるカメラだと思いました。
それでは次に実写テスト!といきたいところだったのですが・・

Nikon ZR / NIKKOR Z 20mm f/1.8 S / 15sec / ISO1600
残念ながら天候にあまり恵まれず、近所でちょっとテストしたくらいです。尚レンズは
こちらも貸し出しですが非常に性能が高く、開放からフルサイズ周辺までよく映る一本です。
この辺りはさすがにNIKKOR Z、しかもS-Lineレンズだなと、毎回感心するばかりです。
まぁ、晴れなくてはその実力を存分に発揮する事はできないのですが・・ただ使っていて
あれ?いつもよりちょっとノイズ少なくない?
と、感じていました。晴れないものは仕方ないので、次にその辺りを確かめてみましょう。
明らかにダークノイズが少ないZR!?
天体写真の画質に影響するダークノイズ。
その大小を計るためにいつものようにボディキャップをして、長秒露光してみました。
(ダークノイズ等のお話については本ブログでも、今度、一度まとめておく予定です)

Nikon ZR / ISO1600 / 300sec / Photoshop CC +5.0 / NR OFF / 5000K
こちらがZRのダークです。しかし何か比較するものがなくては大小関係が不明です。
そこで全く同じ撮影設定のダークを並べてみます(Z6については環境温度も同じです)。


いかがでしょうか?明らかにZRは画像全体が暗いという事がわかります!
ただ注意点もあって、暗く見えるから直ちに低ノイズと結論づける事はできません。
その点については後述しますが、次に画像を拡大してノイズの「見た目」を確認します。

(Aveは平均レベル、Sigmaは標準偏差を表していますが、その意味についても後述します)
これからZRは画素数が変わらないにも関わらず、ノイズの粒が小さい事がわかります。
というかZ6は経年劣化しているためか、かなりデッドピクセルが目立つようになりました・・
ちなみにD810Aはより高画素であり、かつ色味が同じ色温度、色補正をしても寒色寄り。
どうやら「特別なチューニング」がされているようだ、という事がダークからも見えてきます。
ノイズ量を数字で比較する(+時間変化の計測)
天体写真は結局、見た目の勝負ですから明らかにノイズが少なそう、コレでもまぁいいです。
しかしもう少し客観的に、具体的に数値化して語れるなら、個人的にはその方が落ち着く。
そこでよく「ダークノイズ」を議論する時に使われる「ヒストグラム」に注目しました。

平均;画像平均レベル。輝点ノイズなど「固定」ノイズが多いと値が大きくなる。
標準偏差;ランダムノイズ(原因はほぼ熱)が多いと値が大きくなる。
コレらは大まかな意味合いですが、第一近似としては悪くないです。コレに則ると・・
固定ノイズ;ZR < D810A 〜 Z6 (左ほど少ない)
ランダムノイズ;ZR 〜 D810A < ZR (左ほど少ない)
という事がわかります。いずれもZRが一番優秀である事を示しているのです!
しかし固定ノイズはほぼ「ダーク減算」という操作によって消し去る事ができてしまいます。
どちらかというとランダムノイズの方が画質への影響が大きく、抑えるため時間が必要です。
長時間露光して多数枚、加算平均処理をする理由はこのノイズをやっつけるためなのです。
そう考えるとやはり画素数が多いにも関わらず、D810AはZRに並べるという点で優秀です。
改めて天体専用機として発売されただけはあるな、と思わされた次第です。
・ノイズの温度変化
ちなみにですが、ノイズは基本的に温度に比例して増えていきます(だから冷却がある)。
そこでZRとZ6については100分間ほど撮影し、同じ環境下でその時間変化を調べました。

まずは平均レベルについてです。曲線はある現象が平衡に向かう時に現れると仮定して描画。
(コンデンサーの充電など、いわゆる「時定数」を持つ現象で現れる曲線と式は同じです)
基本的に撮影時間が長くなればなるほど熱は溜まってきますから、レベルは上昇しています。
しかしながら全域でZRの方が小さく、輝点ノイズなどは常に小さいという事がわかります。
次にランダムノイズの大きさを現す標準偏差をチェックしてみましょう。

こちらを見てもやはりZRの方が小さいです。また温度が上がるとZ6はバラつく傾向がある。
従って安定性でもZRの方が良さそうですね。ちなみに時定数はどちらもほぼ同じでした。
ZRは放熱性が高い設計らしいですが、ノイズ低減にはそこまで寄与していないようです。
本当はセンサーの温度測れればいいんですが(N.I.N.Aで記録できたかもしれませんがZRはまだ)。
結論:ZRはノイズが少ない!
ということでNikon ZRの天体写真適正を調べてみたのですが明らかに
Nikon ZRはノイズが少ない
という事がわかりました!ランダムノイズはD810Aと同等レベルという点は特筆に値します。
画素数こそ減りましたが、ようやく天体専用機に比肩するモデルが登場したと言えるでしょう。
後はかいぞ・・できるかどうかですが、海外ではすでにやっちゃってる人がいるみたいです。
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コメント
ベース感度が高いことから天体向きかも?
と思っていましたが、ノイズが少ないのであればますます天体向きですね
背面液晶が大きいのもプラスです
あとは天体改造できるかどうか?