2025年の秋は昨年ほど明るくはないものの、いくつかの彗星(レモン、スワン、恒星間天体アトラス)が薄明・薄暮の空を賑わせています。既に動画で紹介したものですが、ここにはその資料集ともう少し詳細なデータを載せておきたいと思います。
この秋注目すべき三つの彗星
只今(2025年10月13日)そこそこ明るい彗星が数個、珍しい恒星間天体が一つ来ています。

この中で恒星間天体アトラス以外は、日本(北半球)でも撮影する事ができます。
特にレモン彗星は明るく比較的長く観察できるため、既に撮影された方も多いようです。
既に紹介動画を作ったのですが、ここは資料置き場+軌道要素などの情報を置いておきます。
レモン彗星 (C/2025 A6)
おそらく、この秋最も注目度の高い彗星です。理由は単純で最大3等級程の見込みだから。
現時点では明け方、北東方向の空に見えていますが徐々に高度は落ちてきます。
逆に光度は日に日に増してくる、尾もどんどん長くなるはずです。軌道要素を見ると
e (Eccentricity) : 0.9956310
q (Perihelion distance) : 0.5298890
i (Inclination) : 143.66350
Ω (Longitude of ascending node) : 108.09790
ω (Argument of perihelion) : 132.97000
L (Longitude of perihelion) : 148.94967
B (Latitude of perihelion) : 25.69357
T (Time of perihelion passage) : 2460988.03830(2025/11/08)
P (Orbital period in years) : 1335.69
地球最接近まで1週間、近日点通過はもう少し先になるという事です。しかしながら・・
既にイオンテイルはかなり発達しているようで、10月10日の明け方に撮影した結果は

SVBONY SV555 / Nikon Z6 (180sec/ISO800) / CBP filter / DSS 10-stack
こんな感じになりました。これ、243mm(センサーはフルサイズ)ノートリミングです。
ただし下弦の月が煌々と夜空を照らすため、コメットバンドパスフィルターを使いました。
そのためイオンテイルはしっかり写っていますが、ダストテイルはやや控えめです。
尚、今回撮影に使用した鏡筒は10万円以下で手に入る本格的アストログラフ
です。値段の割に写りはとても良いです!一方で欠点も幾つか無くはないです。
今度しっかりとした動画レビューを作りますので、しばらくお待ちくださいませ。
スワン彗星(C/2025 R2)
こちらの彗星は既に近日点を通過しており、夕暮れ時の東の空に見えています。
e (Eccentricity) : 0.9934170
q (Perihelion distance) : 0.5040530
i (Inclination) : 4.47360
Ω (Longitude of ascending node) : 335.34600
ω (Argument of perihelion) : 308.31960
L (Longitude of perihelion) : 283.75068
B (Latitude of perihelion) : -3.50845
T (Time of perihelion passage) : 2460931.33140(2025/09/12)
P (Orbital period in years) : 670.01
また思った以上に明るくなっているようで、現在5等級近くまで光度を上げています。
これから減光が始まりますがこの彗星の見どころはなんと言っても10/17&18。
バンビの横顔すぐ上くらいにやって来ますので、撮り甲斐のある彗星になりそうです。
恒星間天体アトラス(3I)
この彗星は非常に特異な天体です。「恒星間」天体の名の通り、太陽系外から来た彗星。
軌道要素、特に離心率を見ても異常に大きい(6を超える!)という事がわかります。
e (Eccentricity) : 6.1385740
q (Perihelion distance) : 1.3563240
i (Inclination) : 175.11310
Ω (Longitude of ascending node) : 322.15740
ω (Argument of perihelion) : 128.01250
L (Longitude of perihelion) : 14.04361
B (Latitude of perihelion) : 3.84850
T (Time of perihelion passage) : 2460977.98390(2025/10/29)
P : 双曲線軌道のため周期無し
現時点でも観測例は三つ目と、かなり珍しい天体である事がわかっています。
そしてもう、これ以降は二度と人類の目で見る事はできないでしょう。
宇宙という広大な虚空を漂い続け、今この瞬間だけ我々の目の前に現れた彗星・・
これぞ天体のロマンです。尚、観察できるのは11月以降、10等級以下と暗いです。
中々見つけるのは大変でしょうから、撮るならやはりスマート望遠鏡が楽で良いでしょう。
もちろん、狙える方は本格的な長焦点の望遠鏡を使い、貴重なデータを残してください。
撮影方法
最後に撮影方法についてまとめた資料を置いておきます。

彗星の基本は「少し露出は短めに、多数枚撮影」です(明るければ彗星ガイドも可能ですが)。
後は月の影響がそこそこありますので、CBPフィルターはあった方がいいかもしれません。
画像処理はフリーのDSSでも対応できますので(動画作成済)とりあえず撮っておきましょう。
※本ブログにはアフィリエイトリンクを使用しております。
コメント