一般に天体写真を撮影するための望遠鏡、いわゆる写真鏡は非常に高価です。ところがSVBONYから10万円以下で手に入る、優れた写真鏡が登場しました。レビューさせて頂いたところ、小口径ですがF4.5でフルサイズ周辺まで対応、しかも星像も優れている、素晴らしい一本でした。
10万円以下で手に入る写真鏡 SV555
天体写真を撮影するための望遠鏡を「写真鏡」または「アストログラフ」と呼びます。
一般にこれらの鏡筒は非常に高価で、10万円以上は当たり前、数百万もザラという世界。
そのような中、SVBONYからこの世界では安価な部類の一本が発売されました。
・口径:54mm
・焦点距離:243mm (F=4.5)
・イメージサークル:44mm (フルサイズ対応)
※ビクセン規格アリガタ、ガイド用の小アリミゾ、EAFブラケット等が付属
10万円以下で鏡筒バンドなどが全てセットになっている・・これはまさに破格です!
(赤い猫ちゃんが登場した時にも同じこと言ってましたが、今や高級猫になったので・・)

また写真をご覧いただくとお分かりかと思いますが、絞りや回転装置まで付いています。
(正直なところ、絞りは使いませんでした。天体用としては開放で何の問題なかったので。)
少しプレートからの距離があって重心が高く見えますが、これはEAF取り付けのためです。
逆に言うとEAFを使ってしっかりとテンションをかけ、保持した方が撮影には良さそうです。
ちなみに上部のプレートはミニタイプのアリミゾになっていて、ガイドカメラが載ります。
C/2025 A6(レモン彗星) 撮ってみた
さてこちらのSV555は焦点距離が243mmと、望遠鏡の中では比較的、短焦点の部類です。
ちょうどカメラレンズと望遠鏡の中間あたりをカバーする領域になります。
(他にも赤猫やVixen FL55SSなどコンパクトながら高性能な写真鏡がひしめき合う領域)
もちろん、星野写真の撮影でも活躍しますがちょうど今、レモン彗星がいい感じです。

・Nikon Z6 (180sec / ISO800)
・SVBONY SV555 (F4.5)
・DSS (彗星基準, 10枚, ダーク減算, フラット補正)
・Yamaguchi-city 25/10/13 28:00
今はもう少し、尾が発達しているようですが、この時点でも243mmでギリギリでした。
またすでに太陽風の影響があったのか、イオンテイルが少し蛇行しているようにも見えます。
ちなみに10月中旬までは月明かりの影響が大きく、かなり悩まされました。
そこで、満月前後にはコメットバンドパスフィルターを入れて撮影もしていました。

ただし後述するように処理が難しくなる上に、色がほぼ単色になってしまう印象でした。
その分月明かりの影響が減って細かい構造が見えるかと思ったら、そう言うわけでもなく・・
正直言って月明かりがあっても、ノーフィルターの方が良かったかもしれません。
驚きの光学性能!フルサイズ周辺まで乱れない星々
それでは次に、肝心の星像をチェックしていきましょう!
彗星基準コンポジットにすると星が線になるため、基本的に撮って出し画像を見ていきます。
・4隅等倍像
まずは4隅等倍増をチェックしていきます。一辺あたり256ピクセル、5分割表示にすると

いかがでしょうか?フルサイズ周辺まで、一糸乱れず星が写っているではありませんか!
正直、この結果を見た時にはかなり驚きました。とにかく周辺まで星が真ん丸です。
少し明るい星になってもいわゆる「口径食」が起きずに、真ん丸に表現できてしまう。
やはり無限遠に特化した、望遠鏡ならではのスッキリ感はすごく良いなと思わされました。
・RGB分解
次にもう少し詳しく見るためにRGB分解してチェックしましょう。
中央と一番甘く見えた左上(かなり低空に相当する)をそれぞれRGBに分けて表示すると

いや、これ中央すごくないですか?全く収差を感じない、驚異的な写りだと思います!
一方で周辺の方はやや明るい星が、長波長側ほど太っているように見えます。
従ってやや赤ハロ傾向ではありますが、かなり低空なのでその影響もあるかもしれません。
もう一つ驚くべきポイントがありましてこちらの望遠鏡、コストカットするために
特殊ガラスはED1枚のみ
えっ・・?そんなのでこの性能が実現できてしまうの!?と、さらに驚いてしまいました!
スーパーEDなどを使用しない、いわゆる「変形ペッツバール」でもここまで出来るのです。
いくつかの弱点(些細なことですが)
弱点もいくつかなくはないです。とは言ってもどれも些細な事ではありまして・・
・フィルター関係其の一;取り外す時少し注意が必要
こちらには48mmフィルターを装着できるようになっているのですが、アクセスが少し大変。
四つの六角ボルト(M3?)がかなりキツく絞められていて危うく舐めるところでした。
付属の六角レンチだと少し暴れる感じ。工作に不慣れな人はちょっと戸惑うかもしれません。

とはいえカメラとの接続側ですからこれくらい頑丈じゃないと困ると言う一面もあり・・
こればかりは「気をつけて取り外してください」と言うしかないと思います。
・フィルター関係其のニ;干渉フィルター使用時、割と色むらが出る
これもフィルター使用時に思った事なのですが、特に干渉型の場合は色むらが出ます。
実際にフラット撮影をして、レベルを挟み込んでみると、こんな感じになります。

ゴミがたくさん、写ってる・・それは置いといて中央はシアン、周辺はマゼンダ寄り。
これだけ色むらがあったので、CBPフィルター使用時は補正に苦労してしまいました。
おそらくなんですが、望遠鏡としてはテレセン性はそんなに良くないんじゃないかといます。
(逆に言えばある程度犠牲にしても、星像に影響が少ない部分でもある。)
・迷光処理がイマイチ?
さらに今回は周辺が割と明るいところで撮ったのですが、どうもムラが出やすく感じました。
これは確信は無いのですが、筒内部の迷光処理が今ひとつなことが原因じゃ無いかな・・と。
一応、初期ロットから対策はしてあるみたいですが、それでも強烈な光には弱いみたいです。
実際にマウント側から中を覗いて光を当てると、艶消しはしてあるもののそこそこ反射する。
従って迷光処理については、さらに見直しが必要なんじゃ無いかと思っています。
まとめ;価格に対して性能が良すぎる!神望遠鏡
しかし、そんなことよりこの価格でこの結像性能。これが素晴らしいと言うべきでしょう!

その上、プレートなども全てセットになっていますのでTリングがあればすぐに撮れる。
従ってカスタマイズの必要がなく、比較的初心者の方にもお勧めできる望遠鏡です。
ありていな言い方にはなってしまいますが、コスパ抜群のアストログラフだと確信しました!
だからあまり細々とした事は言わず、良いところを褒めるべきかなと思いました。
(いろいろと要望出しすぎて、結果としてお高くなってしまっては本末転倒ですからね・・)
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